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時事問題(8)勝負の分かれ目

時事問題だから、というわけではありませんが(笑)時事通信と日本経済新聞社の経済ニュース分野での覇権を賭けた競争の様子を描いた傑作をご紹介します。もちろん、勝利の女神がどちらに微笑んだのかはご承知のとおり。今や日本を代表するクオリティペーパーとも評される新聞が単なる「株式市場の業界紙」だった時代から筆を起こして、電子メディアの到来から未来までを予見するこの大作を、今から7年も前に書き上げた筆者の力量には感心するばかりです。(一度お会いしたことがあり、その頃は週刊文春の記者さんでした)

ロイター、日本経済新聞、ブルームバーグ 日、米、欧、「メディアと市場」の半世紀の興亡を空前のスケールで描く、ノンフィクション。

1960年代、証券取引所のコンピュータ化に始まった資本主義の変容は、潰れかかった通信社に黄金郷への扉を開けた。同じ頃、日本でも「日本経済新聞」と「時事通信」が、この黄金郷への道を歩き始める。イギリスの潰れかかった通信社で30年前に始まり、アメリカの新聞社、日本の通信社、新聞社を巻き込んで70年代に花開き、80年代の激しい国際競争を経て、世界を変えたジャーナリズムとコンピュータと金融の大きな変化の波。そのなかで生まれたもの、喪われたものは何だったのか──。

印象に残った言葉をいくつか順をおって引いてみましょう。

人生は卑小になるには、長すぎる(chapter2 取引所とコンピュータ p32)
通信社「電通」の歴史はここに終わったのである。(chapter5 筆剣一如「電通消滅」 p85)
この年(1986年)の8月、杉山隆男の『メディアの興亡』が出版されている。(chapter15 黄金の80年代 p334)

ある意味で、この本はその正統的な続編と言えるでしょう。

太田が新聞記者になった時に上司が教えてくれたことがあった。それは「上を見るな、前を見ろ」ということだった。ところが、この会社はどうだろう。若い社員は中堅の社員を、中堅社員は部長を、部長は取締役を、取締役は社長を見ながら仕事をしている。(chapter20 試練 p447)

「静かに行くものは健やかに行く。健やかに行くものは遠くまで行く」(chapter20 試練 p456)

倒れる人間が出ても、会社は変わりの根性人間で埋め合わせればすむだろう。しかし、力尽きて倒れた人間は、その家族にとってかけがえのない存在なのだということをもっと真剣に考えよう。(chapter23 愛する者のために p540)

最終章だけ全く異質なのですが、最後にこれを持ってくるところに、この本の価値があるし、著者の人間性の現れだと思います。

こういった歴史を踏まえて現在のメディア状況があるわけです。そこには単に「ウィキペディア」を引いただけでは決して分からない「人間の物語」があるのです。通信社の存在理由や、時事と共同の違い(前者は経済・産業に、後者は社会・スポーツに強い、など)や、電通との歴史的関係まで。新聞・出版を目指す方にも一読をオススメしたいと思います。

時事通信社 - Wikipedia

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