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コミュニケーションとは(再) オススメ本(3)

このブログを始めたとき、いちばん最初に書いたエントリーです。大野晋さん著『日本語練習帳』 (岩波新書) のレビューです。

この本がなにより優れているのは、ここに収められている知識の量ではなくて著者の日本語に対するスタンスの明快さです。最もそれが理解しやすいのは巻末の文章でしょう。

「自分の思うところをaと表現したとき、相手がa’と取ったとしたら、分からない表現をした自分が悪い。相手がaと取れるように、aとしか取れないような形式を選び出して表現することを心がけなくてはならない。言葉とは天然自然に通じるものではなくて、相手に分かってもらえるように努力して表現し、相手をよく理解できるようにと努力して読み、あるいは聞く。そういう行為が言語なのだと私は考えています」

コミュニケーションにとっていちばん大切なのは「謙虚さ」、そして「努力」。なんと深い言葉でしょう。

例えば恋をして(いきなりな例ですが)相手のことを好きになったします。「あの人は、どういう人だろう?」「きっと、こんな人に違いない…」「ああ、こんな人だったんだ!」そういったイメージの積み重ねを繰り返して、人間関係を築いていくのです。(しかも厳密に言うと、そのイメージと実体が一致することは、決してないんですね)

 「わかる」「わかりあえる」というのは、このようにとても曖昧で不確実なものなのです。ですが、それを人は「信じて」「信じあい」ますよね。そういった人間同士の関わりあいが“コミュニケーション”だとしたら、そこに「謙虚さ」と「努力」がなければ、過去から未来へとつづく人の営みが存在しうるはずがないのです。

面接でもエントリーシートでも同じことが言えます。「自分のことをaと表現したとき、相手がa’と取ったとしたら、分からない表現をした自分が悪い。相手がaと取れるように、aとしか取れないような形式を選び出して表現することを心がけなくてはならない」。人生のすべてが自己表現です。自分自身のことを表現できない人が、他のものを褒めたり薦めたりできるはずがないではあーりませんか。

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